民法改正① 相隣関係規定の見直し

芦屋 打出 司法書士 相続

こんにちは、芦屋のうちで法務事務所 代表司法書士の向井亜希子です。
芦屋もぐっと暖かくなって、桜がチラホラ咲き始めました🌸
ことしは4年ぶりのさくらまつりも開催されるとのことで、いまからとても楽しみです♡

2023年4月民法改正が施行されます

近年、相続した土地の相続登記を行わないなどの理由から所有者が不明な土地や所有者の所在が不明な土地(「所有者不明土地」)が増加し、土地の利用の阻害や隣地への悪影響等が社会問題化しています。

そこで、既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化を主な目的として、民法改正が施行されます。

民法の改正の概要は、以下のとおりです。

☑ 相隣関係規定の見直し
☑共有制度の見直し
☑ 所有者不明土地管理制度等の創設
☑ 相続制度の見直し

今回のブログでは、この中から「相隣関係規定の見直し」について詳しく説明していきます。

相隣関係とは?

相隣関係とは、「隣り合う土地を所有する者同士が、自分が所有する土地を利用しやすいよう調整し合う関係」のことです。

今回の改正では、隣地が所有者不明土地等である場合を想定した相隣関係規定の見直しが行われました。

隣地使用権の見直し

隣地使用権とは、必要な場合(自宅の塀のためにとなりの敷地に一時的に立ち入りたい、など)隣地の使用を請求することができる権利のことです。

旧民法では、「境界又はその付近において障壁又は建物を建造し又は修繕するため必要な範囲」に限られていますが、今回の改正により、隣地使用権の範囲が拡大され、以下の場合に隣地を使用することが認められました。(民法209条1項)

・境界線付近において、建物などを築造・収去・修繕する場合
・土地の境界標の調査・境界に関する測量をする場合
・隣地の枝が自分の土地に越境してきている際に、民法233条3項の規定によりその枝を切除する場合

ただし、いきなり隣地に入って上記行為をしてよいわけではないので注意してくださいね!

隣地使用権を行使する際は、隣地の所有者・隣地を現在使用する者のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。(民法209条2項)また、隣地を使用する際は、あらかじめ、その目的・日時・場所・方法を隣地所有者・隣地を現在使用する者に通知しなければなりません。(民法209条3項本文) ※場合によりますが、緊急性のない場合、通常2週間程度前には通知すると解されています。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、隣地の使用を開始した後、遅滞なく通知すればよいこととなっています。(民法209条3項ただし書)

ライフライン設備の設置・利用に関する権利の明確

電気、ガス、水道などのライフライン設備(生活に不可欠な設備)を自分の土地で使用するために、他人の土地や設備などを利用しなければならないこと、ありますよね。

しかし、旧民法では、電気、ガスなどの現代的なライフラインの設置に関しては明確化されていませんでした。

そこで、今回の改正では、電気、ガス、水道などの現代的なライフラインを念頭に、以下2つの権利が明確化されました。

・必要な範囲で他の土地にライフライン設備を設置する権利
・他人が所有するライフラインの設備等を使用する権利

ライフライン設備設置権は、他の土地に設備を設置しなければ電気・ガス・水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない場合に認められます。(民法213条の2第1項)

ライフライン設備使用権は、他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を引き込むことができない場合に認められます。(民法213条の2第1項)

ライフライン設備設置権・ライフライン設備使用権(以下、併せて「ライフライン設備設置・使用権」)ともに、対象となる設備は、電気・ガス・水道水・これらに類する継続的給付に必要な設備です。

ライフライン設備の設置・使用の場所及び方法についても、上記の隣地使用権と同様に、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければなりませんし、ライフライン設備設置・使用権を行使するときには、あらかじめ、その目的、場所及びその方法を他の土地の所有者及び他の土地を使用しているものに通知しなければなりません。

また、土地の所有者がライフライン設備設置・使用権に基づき、他の土地等に設備を設置・接続する場合には、償金・費用を支払う必要があります。

越境した枝を自ら切除できる権利の創設(改正民法233条)

旧民法では、隣地の竹木の枝が越境してきた場合にも自ら切除することはできず、越境した竹木の所有者に切除させる必要がありました。しかしこの規定には、隣地所有者が切除に非協力的な場合や隣地が所有者不明土地の場合などには、隣地所有者に切除させることが非常に困難であるなどの問題点がありました。

そこで、今回の改正では、以下の場合には、越境された土地の所有者は、越境した枝を自ら切除することができるようになりました。(民法233条3項)

・ 竹木の所有者が催告後相当期間(※)に切除しないとき
 (※具体的な事案によるが、基本的には2週間程度)
・ 竹木の所有者を知ることができず、又は所在を知ることができないとき
・ 急迫の事情があるとき

また、隣地の竹木が数人の共有であったときには、各共有者は、他の共有者の同意等を得ることなく単独でその枝を切り取ることができることとなりました。(民法233条2項)

これにより、竹木が越境してきて困っている土地の所有者は、竹木の共有者の1人から承諾を得れば、その共有者に代わって枝を切り取ることができます。また、承諾を得られない場合でも、竹木の共有者の1人に対しその枝の切除を求める裁判を提起し、その切除を命ずる判決を得れば、代替執行(民事執行法171条1項、4項)が可能となります。

まとめ

ちょっと難しい言葉が多くなってしまいましたが、ものすごくざっくりいうと、

今まで隣の土地のことで困っていたけど、所有者が不明で、対策がとれなかったことが、今回の民法改正によって、なんらか解決する術ができた!

ということです。

ただし、手順や手段を間違ってしまうと、権利の濫用で罪になってしまうこともありますし、トラブルの元となります。
勝手に土地に立ち入ったりせず、まず、市役所や専門家に相談してから行動することをお勧めします。

次回も引き続き、民法改正について紹介していきます。

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